第12章・造作〜玄関扉          
平成22年 3月 4日          
 居住区が二階になる都合で、家族から断固たる要望があった。
 二階から玄関扉の施錠開錠が出来るようにと。

 例えば、訪問者がインタホンを押す。
 知り合いだから入って貰おうと思っても、わざわざ下まで鍵を開けに行くのは面倒くさい。
「どーぞ」と告げて、上からカチャリと鍵を開ければ楽ちんではないか。
 我が家の住民は押しなべて不精者である。
 リモコン扉なんて、贅沢だとは思うけれど、ここでケチると誰かが来ても面倒臭くて居留守を使うような、 陰険な家族になりそうなのである。

 敷地一杯に建物が鎮座しているから、開き戸を開ける寸法が取れず、引き戸になった。
 引き戸玄関だと種類が少なく、えらい高価なキーレスリモコンの扉になってしまった。
 玄関は家の顔だというが、これではまるで化粧のきつい年増のOLの気分。
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