第10章・内部工事〜折れ戸          
平成22年 2月 20日          
 いつだったか憶えていないが、以前折れ戸の中央で指を挟み、ひどく痛い思いをしたことがあり、 この歳になってもトラウマとして残っている。
 だから、風呂は開き戸でとお願いしてあったのに、見れば遠慮なく折れ戸が付いていた。
 慌てて高石さんに電話を入れて確認した。
「そうでしたね。開き戸って聞いてました。手違いです」
 すぐにでも直してくれるような様子だったけれど。

 電話をしながら戸を眺めていると、どうしたってこれで指を挟むわけがないような気がしてきた。 しかも開き戸にしたら、内部干渉が大きすぎて使い勝手が悪いのは明らかである。
 予定通り開き戸にしていたら、きっと後悔していただろう。
 俺の想像力なんて、所詮こんな程度なのだ。

 その場で「やっぱ、これでいいわ」と告げた。

 今と昔では、折れ戸の構造が違うのだろうか。
 若しくは、俺が相当間抜けだったのだろうか。
 この戸で指を挟むには
「よし、俺はこれからここに指を突っ込んで、悲鳴を上げるまで力一杯開くのだ」
 と、断固たる意志と行動力が必要に思えた。
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