第6章・準備〜震える監督 | |
平成21年 1月 15日 | |
ルービック・キューブを発明したのは建築設計士だ。 元々は玩具ではなく、ルービックさんが自分の空間配置の感性を 磨く為の道具として作ったと聞いた。 九町さんと、やたら寒そうな高石さんが分厚い図面の束を見ながら打ち合わせをしていた。 俺も後ろから覗いて見たが、壁らしいとか、窓っぽいくらいしか判らない。 細かい線や数字や記号がビッシリと並ぶだけの一枚の紙から、彼らは出来上がりの立体情景が完璧に 頭に浮かぶのだろう。 資格資格と騒がしい世間だが、資格で図面は読めない。必要なのは経験と能力だ。 紙(楽譜)を見るだけで、曲が頭に浮かぶ音楽家。 紙(配線図)を見るだけで、全ての作動を把握する電気工事人 紙(地図)を見るだけで、場所の状況や距離を認識するドライバー 紙(図面)を見るだけで、完成した建物を描く建築家 俺に出来るのは、紙(通帳)を見るだけで、悲惨な将来を予想するくらいである。 |
野天で日向ぼっこをする叔父さんと、凍えながらしゃがむ男性の図。 そこでは、高層ビルの空調の効いた広い会議室に匹敵する、プロの打ち合わせが行なわれている。 しかし、そんなに寒かったか高石さん。 |
前のページへ ―69― 次のページへ |