第4章・着工〜地質検査          
平成21年 11月 9日          
 時系列が前後するが、建築申請の数日前に、良樹から電話が入った。
「今度の月曜日に地盤の検査に入るからな」
「そうか、見学行っていい?」
「俺は行かんけど、知らん人が作業しとるから」
「わかった。不審者と思わんように気をつけるわ」
「お前が不審者と思われんように気をつけろよな。作業の邪魔すんなよ」

 当日、現場に行ってみるとお二人で作業していらっしゃった。
 男らしく、俺はまず自分の名を名乗った。
「どんな具合ですか。ここらの地べた。やっぱグズグズ?」
「そんなことないですよ。特に問題ないですね」
「あら、そうすか」
 良樹に脅されていた心配は、杞憂に終わったようだ。
「鉄骨だと、若干の補強は要るでしょうけど。木造なら大丈夫です」
 建築の場合、この“若干”に要する費用が日頃の買物感覚から桁4つくらい違うことを、俺は学習していた。
「そりゃよかった。へえ、こういうんで調べるんスか」
「そうなんですよ」
 なかなか興味深くて、それからしばらく作業法や経験談、苦労話を延々と喋り倒してしまい、 結果的に作業の邪魔して帰ってきた。

 ダンベルみたいな重石で、鉄パイプを地面にねじ込みながら、その抵抗値で地中の状態を調べるのだそうだ。
 通常、敷地の4〜5箇所で2〜3mくらい地中まで潜れば、概ね地盤状態は判るらしい。
 極希に地下水路などに当たると鉄パイプがストンと落込んで、施主と建設業者は蒼ざめるんですよ。  
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