第1章・発端[          
           
 このあたり一帯は30年近く前までは、村の神社が建っていた。

 社があった場所がこの公園として整備され、土地の場所は鎮守の森の一部にあたる。
 俺が小学生の頃には、当時ほとんどの洟垂れ坊主がしていたように、その森に分け入り秘密基地を造っていた。
 密生した木々の枝から枝に、どこかか拾ってきた物干し竿を渡し、小汚い毛布やビニールシートをかけて雨露を防ぐのである。
 そこには暗黙の会員制が成立していて、秘密基地に入れるのはある意味“VIP”だったけれど、 今そんなことをするのは、田舎の子供より都会の大人の方が多いらしい。
 俺は大人になって、同じ場所にビニールシートではない屋根を造ることになったのだ。

 ほとんど憶えていないが、あの頃宝物でも埋めていれば、土地造成時に発掘されるかもしれないと、密かに期待している。

保育園入学前に、おばあちゃんと一緒に“パンダの公園”と呼んでここで遊んでいた娘は、昨年二十歳になった。
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